1. 心理学の歴史 作成:(同)実践サイコロジー研究所 公認心理師試験対策シリーズ① E-mail: ppinstllc@gmail.com Web: http://www.ppi.tokyo

2. 1860年まで(1) アリストテレス(ギリシャ時代、~BC300) − 論文「魂について / peri psyche」 − キリスト教の影響:生命を人間、動物、植物に 分類 − デ・アニマ:人間の感覚に関する仮説モデル オックスフォード英語辞典 psychology − 最古の出典は1654年:魂や精神の研究 「経験的心理学」(ヴォルフ, 1732) − 魂の学問、道徳哲学 − 精神作用(表象や思考)としての心を扱う姿勢 の芽生え

3. 1860年まで(2) カントの批判「心理学は科学になれない」 − 実験できない、数式に表せない 学問分野としての心理学の設立 − ヘルバルト(ドイツ):表象力学の数値化 − ウィリアム・ジェームズ(アメリカ) − ヴント(ドイツ):世界初心理学実験室 − ヘルムホルツ(ドイツ) − フェヒナー(ドイツ):精神物理学 − ウィーバー()

4. ヴント以前の心理学:連合心理学(1) ロック − 17世紀の思想家 − 経験主義の祖:「人間悟性論」  心を白紙と過程  観念連合:観念と観念の連合は、理性ではな く、経験によって生じる − イギリス経験主義の流れへ バークリー − 物は知覚される限りにおいて存在する − 神の存在を前提とした経験論

5. ヴント以前の心理学:連合心理学(2) ヒューム − すべての知識は感覚に基づく − 類似と近接が観念連合の主要な法則 ベインとスペンサー − 連合主義を連合心理学として体系化 − 学術雑誌「Mind」を発刊し、研究発表の場を 提供 − 連合心理学は役割を終え、近代心理学の礎の 一つに

6. 1860年頃(1) ダーウィン:進化論(1859) − ヒトの祖先がサル − キリスト教の教えに反する − 動物心理学、比較心理学の発展へ 精神物理学(1860) − ヘルムホルツ  エネルギー保存則の確立者の一人  神経インパルスの速度測定  色の三原色(ヤング=ヘルムホルツ説)  知覚は感覚と観念(経験の影響)からなる →感覚生理学と心理学のすみわけ

7. 1860年頃(2) 精神物理学(1860)(つづき) − ウェーバー  感覚の問題の研究:重さの弁別、触二点閾  重さの弁別は相対的なもの  閾(しきい、limen)  ウェーバーの法則:相対的に弁別閾は一定 40gの弁別閾が1gであれば、 200gの弁別閾は5g

8. 1860年頃(3) 精神物理学(1860)(つづき) − フェヒナー  絶対閾:光や音を始めて感じるときの値  フェヒナーの法則: 感覚の大きさは、刺激の強度の対数に比例  様々な実験テクニック、心理学の科学化 平均誤差法(調整法) 標準刺激に対して変化する比較刺激を、実験者もし くは被験者が上昇・下降させる。刺激等価法とも。 丁度可知差異法(極限法) 標準刺激に対して連続的に変化する比較刺激を実 験者が提示。上昇・下降いずれか。 当否法(恒常刺激法) 測定値が存在する範囲を予め定め、標準刺激に対 して比較刺激をランダムに提示。

9. 1860年頃(4) 民族心理学 − ラツァルスとシュタインタール: 「民族心理学・言語学雑誌」 − 言語学との関連および集団の精神に注目 ヴント − 「感覚知覚理論の研究」(1862) − 「人間と動物の心についての講義」(1863) − 「生理学的心理学」(1873) − チューリヒ大学の哲学教授(1873) − ライプツィヒ大学の哲学教授(1874)

10. 1860年頃(5) 大脳生理学的発想(1861) − 19世紀後半から20世紀にかけて: 脳と心の関連を探求する流れ − 18世紀:ガル「骨相学」  脳の機能的局在の仮定  能力の分類の経験的な裏付け  神経心理学へ − 19世紀後半  ブローカやウェルニッケ:言語中枢の発見  フリッチュとヒッツィヒ:運動皮質の研究

11. 1879年以降:近代心理学の成立(1) ヴントと直近の後継者 − 1879:心理学実験室の設立 − 1881:「哲学研究」の発刊 − 意識を対象とし、生理学の手法を用いた実験  刺激を与えたり変化させたりしたときに意識 がどのように変化するか  フェヒナーが感覚を従属変数としたのに対し て、ヴントは意識を従属変数とした  反応時間の研究:トンデス(オランダ)の 手法の体系化  認識→弁別→反応:弁別時間から意識を探求  クロノスコープで1000分の1秒単位で測定

12. 1879年以降:近代心理学の成立(2) 世界への影響 − アメリカ:キャッテル、スクリプチャー、 ティチナー、ウィトマー − 日本:井上哲次郎、桑田芳蔵(よしぞう)、 松本亦(また)太郎 ティチナー:ヴントの後継者 − 要素主義、構成主義的な心理学 − 実験実習の体系化とマニュアル化

13. ヴントと同時代の心理学者と弟子(1) エビングハウス − 「心理学要論」(1908) − ヴントが感覚・知覚に重点を置いていることに 不満 − より高次な心理過程の研究 − 無意味つづりを活用、記憶の忘却曲線 シュテルン:最初の応用心理学者 − 人格主義哲学を基盤に − 個性の発達、差異、個人差 − 目撃証言

14. ヴントと同時代の心理学者と弟子(2) ブレンターノ − 経験的立場からの心理学 − シュトゥンプ  「音響心理学」  現象学:経験の歪みの無い検証  フッサール:現象学の体系化  ゲシュタルト心理学のウェルトハイマー、 コフカ、ケイラ―に影響を与える ミュラー − ブレンターノの影響 − ルヴィン:図と地の反転

15. 反射概念から行動研究へ(1) デカルト − 「情念論」  感覚に基づく、動物精気によって生じる運動  精神の助けを得ずに可能な運動 − 心身二元論 − 自動的な不随意運動:嚥下、瞳孔調整、 咳、くしゃみ − 熱い火に触れた時の反射 − 末梢部から何らかの情報が中心に届くとそこか ら異なる種の情報が発せられて、行動が起こる

16. 反射概念から行動研究へ(2) ウィリス(イギリスの解剖学者) − 反射概念の祖 − デカルトの動物精気を火と光として考えた − 光線をメタファーとしたことから反射と名付け られた − 反射は脳を経由しない − 「解剖学」(1664):視床などを命名、 神経学の体系を示した − 「脳疾患」(1667):進行マヒ、ナルコレプ シーなどを報告。神経に起因する障害を体系化

17. 反射概念から行動研究へ(3) 19世紀:生物学者による進化論に基づく 動物研究 − ロイプ:「トロピズム(向性)」についての 研究(1890) − ロマネス:「動物の知能」において、動物行動 を人間行動のように解釈する逸話法を用いて、 動物と人間の知能に大差がないことを示した − モーガン:節約律  試行錯誤  ある行動についてより低次の行動として理解 できる場合、より高次のプロセスの所産で あるという推論を禁じる

18. 反射概念から行動研究へ(4) ロシアでは、セチェノフ、ベヒテレフ、 パブロフが反射に興味を持ち、パブロフの 条件反射研究へとつながった − 1903年:条件反射説発表 − 消化腺の研究 − 1904年:ノーベル医学・生理学賞を受賞 − 機能心理学(アメリカ):ウィリアム・ジェー ムズ、ジョン・ジューイ、エンジェル  動物心理学を心理学の中に位置づけた

19. 反射概念から行動研究へ(5) 教育哲学者ジョン・デューイ(アメリカ) − ホールから心理学を学ぶ − 「心理学における反射弧概念」(1896): 反射は外界に対する機械的反応ではなく、適応 過程 ソーンダイク(アメリカ) − 教育心理学 − 人間を対象にできず、猫を対象に − 問題箱の実験を通して試行錯誤による学習を 明らかに

20. ゲシュタルト心理学(1) エーレンフェルス(オーストリア) − 人間の心理におけるゲシュタルトの重要性を 最初に指摘 − ゲシュタルト質という概念を提唱 − 音楽を例に出し、音とメロディの異なる性質を 指摘 ウェルトハイマー(ドイツ) − ゲシュタルトという概念を心理学の中で展開 − 仮現運動:動いていないものの中に動きを見る − タキスコープを用いた刺激提示 − 刺激の全体のパターンに対する全体的な生理 過程の過程

21. ゲシュタルト心理学(2) コフカ − 「ゲシュタルト心理学の原理」(1935) − ゲシュタルトは知覚の体制化 − プレグナンツの法則:複雑な世界を単純な方向 に近くする傾向 ケーラー − 洞察学習:チンパンジーを用いた観察実験 − 踏み台を使ってバナナを取る。試行錯誤とは − 異なる レヴィン:第二次世界大戦後

22. 行動主義(1) 20世紀中盤の心理学を特徴づけた ワトソン(アメリカ):心理学の対象は行動 − エンジェル(実験心理学)、デューイ(哲学)、 ドナルドソン(神経学)、ロイブ(生物学と生理 学)に師事 − 1913年に行動主義宣言をし、のちにアメリカ心理 学会会長に − ロイブの向性(トロビズム)とパブロフの条件 反射の影響

23. 行動主義(2) エンジェル:機能心理学 − 1906年:アメリカ心理学会会長就任演説  機能心理学:心的要素の心理学に対する心的 作用の心理学  意識を世界の要求と生体の要求を仲介する心の 作用とするなら、非意識的な習慣も重要  習慣はアメリカのプラグマティズムを代表する ジェームズが重視したもの 新行動主義 − ハル、トールマン、スキナー

24. 行動主義(3) スキナー:オペラント条件づけ − 固体や個人を中心に行動生起の問題を扱う行動 療法の発展の基礎 − 徹底的行動主義  機械論的な行動主義が徹底されたかのような 誤解  根本的かつ革新的な行動主義。ワトソンの行動 だけを見ればいいという考えとは真逆  1953年:「行動療法」という言葉で、行動形成 (シェービング)や応用行動分析を発表

25. 精神分析(1) ゲシュタルト心理学も、行動主義心理学 も意識へのアンチテーゼ さらに踏み込んで無意識を重視 フロイト(オーストリア、ウィーン) − ヒステリーという神経症の治療 − シャルコー(フランス)に師事 − 汎性欲説  性エネルギー(リビドー)を重視  発達段階による異なる:発達理論 − 治療:無意識の探求による抑圧された 性エネルギーの解放(自由連想、夢の活用)

26. 精神分析(2) アドラー:個人心理学 − 劣等感とその補償 ユング:分析心理学 − 集合的無意識を重視 アンナ・フロイト:自我心理学派 − 自我についての理論を発展 − エリク・エリクソン  アイデンティティ=自我同一性  青年期はモラトリアム

27. 精神分析(3) フロム − 「自由からの逃走」(1941) − ナチスとドイツの人々との関係をマルクス主義 とフロイト学説の接合により分析 臨床心理学の基礎 − 症例報告 − 転移と逆転移:心理療法における 治療者-クライエント関係への見方 − 教育分析とスーパービジョン

28. 応用心理学(1) ホール(アメリカ):「児童研究運動」 − 教師や親が子供の心に関心を持つことが重要 − 「入学時における児童の心の内容」(1883) − サリー(イギリス):「児童期の研究」(1895) ビネー(フランス):精神年齢 − 1905年:知能検査の初期 − シュテルン(ドイツ):精神年齢を実年齢で 除する知能指数(IQ)という概念を提案 − ターマン(スタンフォード):アメリカ版の 知能検査

29. 応用心理学(2)  ジェームズ(アメリカ) − 「心理学原理」(1890) − 教師への心理学の講演  シュテルン(ドイツ) − 証言の信ぴょう性 − 「証言心理学論考」、「応用心理学論考」  ミュンスターベルク(ドイツ) − ヴントに師事、ジェームズに招待されハーバード − 「心理学と産業能率」(1913) − スコット「広告心理学の理論と実践」(1903)、 「広告心理学」(1908)、 ワトソンも広告に条件づけを応用

30. 社会心理学(1) 1908年:ゴードン・オールポート 「社会心理学の始まり」 − ロス(アメリカ):「社会心理学」 − マクドゥーガウ(イギリス): 「社会心理学入門」 トリプレット − 実験を用いた社会心理学(1897~1898) − 競争と人の行動

31. 社会心理学(2) 実験を取り入れた社会心理学が盛んに (1920~) − フロイド・オルポート: 「集団の影響の研究」(1920) − マーフィー&ニューカム: 「実験社会心理学」(1931)

32. 臨床心理学(1) ウィトマーの学校臨床(アメリカ) − 臨床心理学という言葉を使い、この分野を創始 − ヴントのもとで博士号を取得 − ペンシルバニア大学に最初の心理クリニックを 設立(1896) − “The psychological clinic” を創刊(1907) − 対象:学校不適応、読字障害 精神分析の発展 − ホール(アメリカ)  フロイトやユングを招聘

33. 臨床心理学(2) 精神分析の発展(つづき) − アイゼンク(イギリス)の批判  精神分析は治療対象が明確でないので、 効果が明確にならない。時間がかかる  行動療法を用いるべき  国立の医療保険システムの影響 行動療法の始まり − ワトソン:アルバート坊や(11か月の乳児) への条件づけ(Watoson & Rayner, 1920) − 行動療法の発展 − ジョーンズ:ポーター坊やの恐怖症低減(1924) →ウォルピによる系統的脱感作法

34. 自閉症の発見 ブロイラー(スイスの精神医学者) − 重度の統合失調症の自閉性(1911) − アスペルガー(オーストリア)らが児童 精神医学へ  心的異常児とされていた児童の一部  他者との関係性を築くのが難しく、自閉的で、 知的には遅れていない  アスペルガーの実績は後年、ローナ・ ウィング(イギリスの児童精神科医)により 評価された(1981) カナー(オーストリア→アメリカへ) − 他者との感情的接触が難しい子供の存在(1943)

35. ロジャーズのカウンセリング 講演「心理療法の新しい諸概念」 「カウンセリングと心理療法」(1940) − 遊戯療法や集団療法に意義を見出し、問題の 解決ではなく個人の成長を目指す 強調点 − 個人の成長 − 知的な側面でなく、情緒的な要素や状況に 対する感情に焦点を当てる − 過去よりもいまここでの状況を重視 − 患者 patients → 顧客 clients − 録音、逐語録の作成

36. 発達心理学(1) ダーウィン:自分尾子供の観察をもとにし た論文(1877) プライヤー:自分の子供を3年間観察 ホール:児童研究運動 − 心理学者、教師、親などから子供の様子の報告 − 「青年期」(1904)、「老年期」(1922) − ビネー(フランス):知能検査 − シュテルン(ドイツ)  子供の発話の経時的な観察  一語文から二語文への移行

37. 発達心理学(2) ヴィゴツキー:外言→内言 − 他者との関わりを通した言語発達 − 「発達の近接領域」(1934)  子供が他者からの支援を得ずに行える少し先  他者の指示や示唆により解決できる課題 ピアジェ − 3人の子供の観察(1925~) − 子供は自己中心的:内言→外言 − 子供の臨床面接 − 子供の世界観、因果関係認識、道徳的判断 →認知発達の段階を定式化

38. 心理統計(1) 誤差と古典的テスト理論 − 19世紀初頭:天文学者ベッセル(ドイツ)  観測の不一致は過誤ではなく個人差 − 古典的テスト理論の発展  質問紙形式の尺度 相関係数と回帰 − ゴルトン(イギリス):心理統計の基礎を確立  個人差の検討と数量化  退屈とあくびの回数、等圧線  ロンドン万博にて大量のデータを収集(1884)  相関、回帰概念の提唱

39. 心理統計(2) 相関と回帰(つづき) − ピアソン(イギリス)  ゴルトンの思想を受け継ぐ  ロンドン大学を生物測定学の研究拠点へ  積率相関係数、ヒストグラム、χ二乗検定 因子分析 − キャッテル(アメリカ)  メンタルテスト(1890):感覚や意志の測定 − ビネー(フランス):知能検査を完成 − スピアマン:知能の二因子説(1904)

40. 心理統計(3) 因子分析(つづき) − キャッテル(アメリカ)  メンタルテスト(1890):感覚や意志の測定 − ビネー(フランス):知能検査を完成 − スピアマン:知能の二因子説(1904) − サーストン:知能の多因子説(1947)  多重因子法の提唱 小集団の平均 − ゴセット(筆名:スチューデント)  1989:ビール会社ギネス入社  スチューデントの t 検定を定式化

41. 心理統計(4) 有意差検定と分散分析 − フィッシャー:推測統計学の定式化  農事試験場の統計研究員  実験計画法、分散分析(F)、 小標本の統計理論  有意水準 5%(1926) 20年間の記録を調べ、1回でも効果の あったものを有意とした  「実験計画法」(1935)

42. WWII後:実存主義の心理学 フランクル − 「夜と霧」 − 実存分析 − ロゴセラピー − 心理学が「意味」を扱うことについての思想的 基盤 − ヒューマニスティック(人間性)心理学の マズローや、ロジャーズに影響を与えた

43. WWII後:アメリカの社会心理学 ブルーナー(アメリカ) − 知覚の人間側の要因  コインの知覚への経済レベルの影響  ニュールック心理学(1947):知覚研究と 社会心理学の接点 − 壊れたB実験(1955)  3群の比較 先行刺激として文字を提示 先行刺激として数字を提示 数字文字の混合提示:統制群  ゲシュタルト心理学に懐疑的 知覚の体制化における意味づけを重視

44. WWII後:実験社会心理学(1) レヴィン(ドイツから亡命) − MITグループダイナミックス研究センター − 優秀な心理学者を育てる  カートライト:グループダイナミクス  フェスティンガー:認知的不協和  シャクター:情動二要因説 アッシュ:集団圧力と同調性(1956) − 8人一組(7人はサクラ)→図形の選択問題 − 3分の2は、7人のサクラの意見に同調

45. WWII後:実験社会心理学(2) ミルグラムの電気ショック実験(1963) − 「体罰が学習効果に与える影響の研究」と教示 − 生徒役が間違うたびに電気ショックを与える よう指示 − 61%~68%の参加者が致死量の電気ショック ジンバルドーの監獄実験(1971) − 学生を看守役と囚人役に分けて役割演技 − 役が過剰になり過ぎて危険な状態になり、中止 研究倫理への関心の高まり

46. WWII後:実験社会心理学(3) 「社会心理学ハンドブック」(1954、 第二版1968) − 「社会心理学における実験」  実験的リアリズムと日常的リアリズム  社会心理学の研究においては前者が重要  参加者に実験の意図を告げないデセプション 手続きの正当性を主張  研究倫理に対する関心が一層高まる

47. 認知心理学の振興(1) 行動主義の最盛期:1930~40年代 トールマン:新行動主義 − 迷路学習を習得したネズミは障害物を迂回する →認知地図の獲得を示唆 バンデューラ:模倣学習 − ボボ・ドール実験(1963) 情報処理モデル(1950年代以降) − シャノン(応用数学者)  「通信の数学的理論」(1948)  情報の定量化:ゼロイチ→ビット

48. 認知心理学の振興(2) 情報処理モデル(1950年代以降)(つづき) − ウィーバー(サイバネティクス)  「通信の数学的理論」(1949)を刊行 − ジョージ・ミラー: 「マジカル・ナンバー7±2」(1956) − チョムスキー:「生成文法論」(1957) トベルスキー&カーネマン − 認知的ヒューリスティックの研究 − プロスペクト理論や心理的会計簿→行動経済学 − カーネマンはノーベル経済学賞を受賞(2002)

49. 認知心理学の振興(3) ブルーナー − 「思考の研究」(1956) − 人間の能動的な概念形成の過程に関する研究 ナイサー:「認知心理学」(1967)を出版

50. 認知心理学への批判 コンピュータのアナロジーや実験室でのみ 人間を考えている 発展 − ジェームズ・ギブソン:アフォーダンス理論 − ナイサー:生態心理学 − ブルーナー:意味づけ ブルンスウィック:生態学的妥当性(1956) − 知覚実験を通して確率論的機能主義を唱えた − もともとは近刺激がどれだけ環境を表しているか − 心理学の妥当性概念へ:社会への一般化可能性

51. 臨床心理学制度の成熟(1) 第二次世界大戦以前 − ドイツ語圏:特にフロイトの精神分析 − ジャネ(フランス)のトラウマ等の研究 − ウィトマー(アメリカ)の心理クリニック アメリカ退役軍人管理局 − 臨床心理学の専門家養成を開始(1946) − PTSDへの対応 アメリカ心理学会 − 会場のロジャーズは、シャコウに「臨床心理学 における訓練についての委員会」を組織して、 検討するように指示

52. 臨床心理学制度の成熟(2) アメリカ心理学会(つづき) − シャルコウによる委員会の勧告  臨床心理学者は心理学者として訓練される  臨床的訓練は心理学の非臨床的(非医学的) フィールドにてなされる  臨床的訓練は査定、介入、研究に焦点化  ボールダーモデル(科学者―実践家モデル) 臨床心理学者はまず心理学の博士号を取得し、 研究者としての実力証明を行う 人間行動の科学的理解を基盤として、 クライエントを支援する

53. 日本の近代心理学の成立(1) 西周(にしあまね) − 啓蒙学者 − アメリカの哲学者ヘイヴンの ”Mental philosophy including the intellect, sensibilities and will” を「奚般氏(ヘヴン氏)著心理学」 (1875)として翻訳 元良勇次郎 − アメリカでホールに師事 − 東京帝国大学の教授に − 実験心理学、成績不振児の学習補償 − 準学術誌「心理学研究」発刊(1912)

54. 日本の近代心理学の成立(2)  松本亦(また)太郎 − イェール大学(アメリカ)へ留学 − ライプツィヒ大学(ドイツ)でヴントに師事 − 知能の研究、軍隊や産業の場面における心理学の 応用  福来友吉 − 東京帝大の助教授として 「変態心理学=異常心理学」を担当 − 催眠を用いた心理療法を行うなど、臨床心理学の 担い手として期待された − 透視・念写学説  公開実験の失敗、助教授の地位を追われる  日本の臨床心理学の発展の芽が摘まれる

55. 日本の近代心理学の発展(1):戦前  大正時代:私学に心理学教育が広まる  森田正馬(まさたけ):森田療法を開発し 「神経症」の治療を行った  1927年:日本心理学会と関西応用心理学会が 設立  ゲシュタルト心理学の影響を受けた知覚研究 が盛ん  適性検査や知能検査の開発 (例:内田勇三郎、内田―クレペリン検査)  陸軍の人事選抜や訓練に心理学者が従事  傷痍(しょうい)軍人のリハビリや職業訓練

56. 日本の近代心理学の発展(2):戦後 教育に関する心理学の振興 − グループダイナミクス、ガイダンス、統計手法行 動主義 臨床心理学:ロジャーズが中心 8つの学会の設立 − 日本心理学会(1927)、関西応用心理学会 (1927)、応用心理学会(東京)(1931)、 動物心理学会(1933)、日本グループ・ダイナ ミクス学会(1949)、日本教育心理学会(1959)、 日本社会心理学会(1960)、日本犯罪心理学会 (1963)、日本臨床心理学会(1964) 第20回国際心理学会の開催(1972)

57. 参考図書  心理学(アカデミックナビ)  子安増生(編著)、 勁草書房、2016  2,700円+税  アマゾンで購入 → http://amzn.to/2ldSdBS